円高が日本経済に与える影響
今日はちょっと重く長い文章になりますが、ご容赦願います。
1ドル80円割れの円高が目前に迫っています。円高が日本経済に与える影響を考察します。
東芝はこの円高を受けて1ドル70円を前提として経営が成り立つか検討していると聞きます。米国の製造業は国内に余り残っていません。巨額の財政赤字を抱える米国は、1980年代以降の赤字を埋めるために、資金調達目的で国債を大量に発行しました。しかし、この国債を購入するのは海外の投資家が中心で、ドルが将来安くなると予想されると海外投資家の購入意欲がなくなるため、「強いドルは米国の国益にかなう」と主張し米政府はドル高を容認しました。その結果、ドル高が続き米国内の製造業は海外に生産拠点を移し、米国内の製造業は衰退しました。代わりに、トヨタ自動車のような海外の製造業を米国内に誘致しました。さらに米国は製造業ではなく、金融業やIT産業で国の経済成長を図ろうとしました。実際、米国の企業の利益総額のうち金融業が占める比率が年々高くなりましたし、マイクロソフト、グーグルに見られるようなIT/ネット関連産業も急成長しました。しかし、金融業やIT/ネット産業は、製造業のように誰でも働ける業界ではありません。その結果、失業率は高い状態が続いています。
1995年に79.75円をつけた円高は主要各国の協調介入で円安に反転しました。現在の米国景気の低迷が数年間は続くと予想され、今回のドル安円高は継続する可能性が高いと予想されます。では、1ドル80円台若しくは70円台の円高で日本の経済はどうなるのでしょうか?日本のGDPに占める輸出入の比率は、日本は輸出が約13%、輸入が約10%です。つまり、国内所得の約13%を海外で稼ぐ一方で、国内所得の約10%を輸入品の購入に費やしているということです。アメリカは、輸入が約13%で、輸出は約7%となっています(これではドル安にしても輸出はさほど伸びません)。日本からの輸出額が減ることは間違いありません。さらに、日産がマーチの生産をタイに移管したように、国内で生産していたものが海外生産にシフトするので、国内の生産額・雇用も減るのは間違いありません。ちなみに、日本が輸出で13%を稼いでいるのに対し、韓国・中国は30%から40%ほど輸出が占めています。だから、両国とも自国通貨安を懸命に維持しているわけです。韓国は自国通貨安を維持することで、製造業が海外に移転するのを防ぎ、国内の雇用を確保しようとしています。
原油や穀物など原材料が安く輸入できることはメリットになります。しかし、材料費が下がるということで製品価格の上昇は望みにくく、デフレ傾向は継続することになります。これは、企業の売上と利益を減らし、従業員の収入をさらに減らす結果につながり、消費に大きなマイナス影響を及ぼします。
輸入コストが高く海外から輸入するメリットがない商品、新興国で真似しにくい高付加価値商品、などは生き残ると思いますが、低付加価値商品、労働集約的商品は海外製品に取って換わられる可能性が高いと考えられます。段ボール製品は安価なわりに輸送コストがかかるため輸入品が国内品のシェアを奪う可能性は低いと考えます(製品を梱包して海外から輸入される段ボールケースは別ですが)。しかし、雑貨などの生産がアジアの新興国に完全に移管されると影響が出ます。労働集約的商品と言うのは、ユニクロに代表される衣料品です。しかし、ユニクロは中国中心の生産体制を改め、アジア諸国への分散を計画しています。日本では労働集約的産業は成立しなくなるか、賃金がアジア諸国並みに安くなるか、どちらかです。
正直言って、日本の将来がどうなるか予測は困難ですし、対処方法も簡単には思いつきません。こんな時に、政府が将来のビジョンを示してくれると元気が出るのですが、今の政治家にそれを期待することは出来ません。小沢さんをどうするかで迷走している民主党、野党は政治とカネの問題にしか関心がないのでしょうか?国民や日本の将来を真剣に考えている政治家はどれだけいるのか疑問です。ハッキリしているのは自分たちで何とかしなければいけないということです。土曜日の朝に重たい話で申し訳ありませんでした。
おまけ
事業仕分けの第三弾が行なわれていますが、第一弾の結果はどうなったのでしょうか?フォローされていないので、どれだけ実施されたのか不明です。

埼玉のダンボールメーカー コーワ株式会社
1ドル80円割れの円高が目前に迫っています。円高が日本経済に与える影響を考察します。
東芝はこの円高を受けて1ドル70円を前提として経営が成り立つか検討していると聞きます。米国の製造業は国内に余り残っていません。巨額の財政赤字を抱える米国は、1980年代以降の赤字を埋めるために、資金調達目的で国債を大量に発行しました。しかし、この国債を購入するのは海外の投資家が中心で、ドルが将来安くなると予想されると海外投資家の購入意欲がなくなるため、「強いドルは米国の国益にかなう」と主張し米政府はドル高を容認しました。その結果、ドル高が続き米国内の製造業は海外に生産拠点を移し、米国内の製造業は衰退しました。代わりに、トヨタ自動車のような海外の製造業を米国内に誘致しました。さらに米国は製造業ではなく、金融業やIT産業で国の経済成長を図ろうとしました。実際、米国の企業の利益総額のうち金融業が占める比率が年々高くなりましたし、マイクロソフト、グーグルに見られるようなIT/ネット関連産業も急成長しました。しかし、金融業やIT/ネット産業は、製造業のように誰でも働ける業界ではありません。その結果、失業率は高い状態が続いています。
1995年に79.75円をつけた円高は主要各国の協調介入で円安に反転しました。現在の米国景気の低迷が数年間は続くと予想され、今回のドル安円高は継続する可能性が高いと予想されます。では、1ドル80円台若しくは70円台の円高で日本の経済はどうなるのでしょうか?日本のGDPに占める輸出入の比率は、日本は輸出が約13%、輸入が約10%です。つまり、国内所得の約13%を海外で稼ぐ一方で、国内所得の約10%を輸入品の購入に費やしているということです。アメリカは、輸入が約13%で、輸出は約7%となっています(これではドル安にしても輸出はさほど伸びません)。日本からの輸出額が減ることは間違いありません。さらに、日産がマーチの生産をタイに移管したように、国内で生産していたものが海外生産にシフトするので、国内の生産額・雇用も減るのは間違いありません。ちなみに、日本が輸出で13%を稼いでいるのに対し、韓国・中国は30%から40%ほど輸出が占めています。だから、両国とも自国通貨安を懸命に維持しているわけです。韓国は自国通貨安を維持することで、製造業が海外に移転するのを防ぎ、国内の雇用を確保しようとしています。
原油や穀物など原材料が安く輸入できることはメリットになります。しかし、材料費が下がるということで製品価格の上昇は望みにくく、デフレ傾向は継続することになります。これは、企業の売上と利益を減らし、従業員の収入をさらに減らす結果につながり、消費に大きなマイナス影響を及ぼします。
輸入コストが高く海外から輸入するメリットがない商品、新興国で真似しにくい高付加価値商品、などは生き残ると思いますが、低付加価値商品、労働集約的商品は海外製品に取って換わられる可能性が高いと考えられます。段ボール製品は安価なわりに輸送コストがかかるため輸入品が国内品のシェアを奪う可能性は低いと考えます(製品を梱包して海外から輸入される段ボールケースは別ですが)。しかし、雑貨などの生産がアジアの新興国に完全に移管されると影響が出ます。労働集約的商品と言うのは、ユニクロに代表される衣料品です。しかし、ユニクロは中国中心の生産体制を改め、アジア諸国への分散を計画しています。日本では労働集約的産業は成立しなくなるか、賃金がアジア諸国並みに安くなるか、どちらかです。
正直言って、日本の将来がどうなるか予測は困難ですし、対処方法も簡単には思いつきません。こんな時に、政府が将来のビジョンを示してくれると元気が出るのですが、今の政治家にそれを期待することは出来ません。小沢さんをどうするかで迷走している民主党、野党は政治とカネの問題にしか関心がないのでしょうか?国民や日本の将来を真剣に考えている政治家はどれだけいるのか疑問です。ハッキリしているのは自分たちで何とかしなければいけないということです。土曜日の朝に重たい話で申し訳ありませんでした。
おまけ
事業仕分けの第三弾が行なわれていますが、第一弾の結果はどうなったのでしょうか?フォローされていないので、どれだけ実施されたのか不明です。

埼玉のダンボールメーカー コーワ株式会社
スポンサーサイト
| 経済・社会 | 07時33分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑